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『おまえ うまそうだな』レビュー ティラノとアンキロの奇跡の親子愛【3〜6歳】

3~5歳向け

『おまえ うまそう だな』レビュー ティラノとアンキロの奇跡の親子愛

宮西達也さん作、ポプラ社から発刊されたこの作品は、もともとは「食べる」ための出会いだったのに、不思議な勘違いから始まった“奇妙な親子関係”が紡ぐ感動物語です。

保育士として読み聞かせてきた経験から、子どもたちの「怖い→安心→愛情」といった心の変化に寄り添える一冊として、大切にしている作品です。

『おまえ うまそうだな』ってどんなお話?

題名おまえうまそうだな
作/絵宮西達也さん
発行所ポプラ社
  • あらすじ
    アンキロサウルスの赤ちゃん(自称ウマソウ)は、一人ぼっちで平原を歩いているところをティラノサウルスに発見されます。
    「おまえ うまそうだな」と言おうとした瞬間、赤ちゃんが「おとうさん!」と駆け寄ったため、勘違いから始まる二人の親子生活が始まります。 
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年齢別の反応|読み聞かせで期待できる反応は?

  • 3〜4歳:
    「ティラノがウマソウを守ってる!」と親子の関係に驚きながらも、感情移入しやすい時期です。
  • 5〜6歳:
    「育てるってどういうこと?」と、親子愛や命の尊さにまで話が広がりやすいです。
  • 保育士目線:
    肉食動物が草食動物を愛する形という“異質な愛”に、子どもたちも大きな感動を覚えます。

保育園5歳児クラスで読み聞かせをした体験談です。

普段は元気いっぱい子どもらしく激しいクラスですが、物語を読み進めていくとだんだんと真剣な顔つきになり始めました。内容をよく理解して、感情移入ができる子も増えてくる年齢なので、健気なウマソウの気持ちや、ティラノの気持ちに共感している様子でした。

内容が伝わっていない場合には補足を入れながら進めていくことである程度の理解まで持っていくことができるでしょう。

保育・読み聞かせにおすすめの理由

  1. 親子の絆を自然に考えられる構造
    生みの親ではないけれど、育てることで愛が芽生える“非血縁の愛”を描いており、絵本を通して家族の多様性に気づけます。
  2. ティラノの心の変化を追いやすい
    「狩る→育てる」という劇的な成長を通して、「強さとは?」「育てとは?」の問いかけができます。
  3. 擬音やリアクションが豊富
    「ガオー!」「ドドド…」など、声で表現しやすく、参加型の読み聞かせが可能です。

わかりやすく怖いティラノの戸惑いや葛藤を声色や抑揚で表現すると、感情の移り変わりが分かりやすくなります。

最初と最後では考え方が変わったティラノの感情に共感しやすくなるでしょう。

絵本の中には、喧嘩をしたときに相手の気持ちに気がつく、イジワルをしない、手を出さないなどの教訓絵本が多いです。

今作のように親子の絆や、親心のような感情を子どもたちに分かりやすく物語を通して伝えられる作品はそう多くないのもおすすめの理由です。

読むときの工夫ポイント|感情を動かす読み聞かせのヒント

① ティラノの「こわさ」と「やさしさ」の声色に変化をつける

はじめのティラノサウルスは「ガオーッ!」「おまえ、うまそうだな…」と低くて怖い声で登場します。

ここは、あえて少し怖めのトーンで読んでみることで、子どもたちが物語にぐっと引き込まれやすくなります。

ただし、途中からウマソウとの関係が深まるにつれて、声色をやさしく変化させていくと、ティラノの「心の変化」を子どもたちも自然と感じとれます。

【例】

最初:「おまえ…うまそうだな(低くゆっくり)」

中盤:「お、おとうさん?(戸惑いながら)」

終盤:「がんばるんだぞ…(ささやくように)」

② 擬音語・擬態語をしっかり表現して、場面に臨場感を出す

この作品には、「ズシーン」「ドドド…」などの恐竜ならではの足音や叫び声が多数登場します。

これらは読み聞かせでのリズム感と音の面白さを生み出す要素です。

特に集団で読む際には、音の強弱を意識して読み進めると、子どもたちが体ごと反応してくれることが多いです。

【子どもの反応例】

3歳児:「ズシーンってすごい音だね!」

5歳児:「次にティラノ来そう!」

③ 子どもたちへの問いかけを入れて、対話的に読む

ティラノがウマソウと過ごすうちに心が変化していく様子を、読み手が補足することで、子どもの理解がより深まります。

問いかけの例

  • 「ティラノはなんで食べなかったんだろう?」
  • 「おとうさんって言われたとき、どんな気持ちになったと思う?」
  • 「もし君がティラノだったらどうする?」

こうした問いかけを入れると、子どもたちは「自分だったら」と考えながら物語に入り込めるようになります。

④ 集団で読むときの配慮も忘れずに

  • はじめは怖がる子がいるかも:
     特に3歳児や怖がりな子には、読み始めに「ちょっとこわいけど、さいごはやさしい気持ちになるよ」と伝えておくと安心です。
  • 笑いや涙のリアクションが混ざる:
     感動シーンでは、泣きそうになる子もいれば、笑ってしまう子もいます。反応の違いを受け入れる雰囲気をつくることが大切です。
  • 読み終わった後に感想をシェアする:
     「だれの気持ちがいちばんわかった?」「いちばんすきなシーンはどこだった?」と問いかけて、考えたことをシェアする時間を設けるのもおすすめです。

シリーズで続けて楽しむおすすめ3冊(ティラノサウルス絵本)

『おまえ うまそうだな』【シリーズ第1作】

  • 対象年齢:3〜6歳
  • 内容概要:野原で卵を拾ったティラノサウルスが、「おまえ うまそうだな」と本来は食べようとした赤ちゃんアンキロサウルスに“おとうさん”と誤解され、親子のように暮らし始めます  。
  • 感動ポイント:「狩るつもりが、守る存在に」変わるティラノの心の成長と愛情に、子どもはもちろん大人も胸が熱くなります。
    • 3〜4歳:「ティラノが守る!」「家族っていいね」と、感情移入がしっかりできます。
    • 保育士視点:「食べる」→「守る」への心理変化を語りながら読むと、子どもの理解が一段深まります。
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『おれはティラノサウルスだ』【シリーズ第2作】

  • 対象年齢:3歳〜
  • 内容概要:成長したウマソウと再会したティラノサウルスのその後が描かれます。大きくなったウマソウが戻ってくることで、ティラノの“父親としての自覚”や誇りがあらためて浮かび上がる一冊です  。
  • 感動ポイント:「親としての決断と誇り」が、自身や保護者としての“育てること”の重みを感じさせます。
    • 4〜6歳:「ティラノはウマソウを待ってたんだ…」と、家族愛や優しさへの気づきが芽生えます。

『おまえ うまそうだな さよならウマソウ』【シリーズ第16作:20周年記念】

  • 対象年齢:3〜6歳
  • 内容概要:『第1作』で別れたティラノとウマソウが、20年後に再会を果たします。年老いたティラノをウマソウが救い、再び親子として寄り添う感動のストーリーです  。
  • 考えさせポイント:「別れと再会」「命のつながり」「年を重ねても変わらない絆」をテーマに、子どもも大人も深く心に残ります。
    • 小学校低学年:「ティラノおじいちゃんだ…」と、世代を超えた愛を理解しようとします。
    • 保育士コメント:「別れ」を扱う場面では優しいフォローを併せて読むと、安心感が広がります。

まとめ 非血縁の家族愛を感じる一冊

『おまえ うまそうだな』は、恐竜×感動のストーリーが詰まった名作絵本です。

保育園の読み聞かせにも、家庭の親子時間にもぴったりで、子どもたちに「本当の強さ」「愛の形」を考えさせてくれる貴重な作品です。

ぜひ、ティラノとアンキロの不思議で温かい親子時間を体験してみてください。

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